
すべては、ひとつの出逢いから始まった。
あの頃はまだ、この出逢いがこれほど長い時間へと続いていくとは、二人とも思っていなかった。
ましてや、いつか私が彼女の「主」となり、彼女が私の「愛玩」になることなど、知るはずもなかった。
ただ、ひとつだけ確かなことがある。
私たちの出逢いは、性欲から始まった。
出逢いのきっかけ
2010年、私たちはある出逢い系サイトで知り合った。
恋人を探していたわけではない。
結婚相手を探していたわけでもない。
二人が求めていたのは、もっと本能的で、もっと正直なものだった。
満たされるSEXがしたい。
身体だけの関係が欲しかった、という意味でもない。
それまでの二人は、それぞれに異性との出逢いと別れを経験しながら、どこか満たされないものを抱えていた。
愛玩には、特に自分の身体についての悩みがあった。
それまでのSEXでは十分な悦びを感じられず、自分は不感症なのではないかと思っていた。
けれど、本当は感じたい。
自分の身体にも、まだ知らない悦びがあるのなら、それを知りたい。
そんな欲望を抱えていた。
私は、そんな彼女を口説いた。
「俺がお前の身体を、必ず気持ちよくしてあげる」
今振り返れば、ずいぶん自信に満ちた言葉だったと思う。
けれど、私は本気だった。
感じられないというのなら、感じさせてみたい。
彼女自身も知らない悦びがあるのなら、そこまで連れていきたい。
彼女の「もっと感じたい」という欲望と、
私の「もっと感じさせたい」という欲望。
二人の性欲は、最初からそこですでに重なり始めていた。
身体を確かめてから
実際に逢ってからも、私たちは性について遠慮をしなかった。
私は、自分の身体を彼女に確かめてもらった。
これから自分を抱こうとしている男がどんな身体をしているのか。
大きさも含めて、彼女自身に触れて確かめてもらった。
そして彼女は、それを受け入れた。
ただ勢いに流されて「抱かれたい」と思ったのではない。
私が彼女に伝えた言葉。
自分の目で見たもの。
自分の手で確かめたもの。
そして、
「この男なら、今までとは違うかもしれない」
そんな期待もあったのだと思う。
彼女自身が納得したうえで、私に抱かれることを望んだ。
そこから、私たちの身体の関係が始まった。
性欲から始まった二人
最初から「主」と「愛玩」だったわけではない。
そこにあったのは、もっと単純で、もっと剥き出しの男と女の欲望だった。
もっと感じたい。
もっと感じさせたい。
もっと満たされたい。
もっと相手の性を知りたい。
身体を重ねるたびに相性の良さを感じ、互いの欲望を隠さなくなっていった。
そして、愛玩の身体にも変化が現れた。
それまで自分は感じにくいと思っていた彼女が、私とのSEXでは、それまでとは違う悦びを知っていった。
それは、私にとっても悦びだった。
もっと彼女を知りたい。
もっと彼女の中に眠っているものを引き出したい。
愛玩もまた、自分の中にはまだ知らない自分がいることに気づき始めていた。
主従の芽
振り返れば、私たちの始まりは美しい恋物語ではない。
むしろ――
性欲まみれの出逢いだった。
けれど、今の私は、それでよかったと思っている。
互いに欲望を隠さなかった。
格好をつけず、自分が何を求めているのかをさらけ出した。
だからこそ、身体だけでは終わらなかったのかもしれない。
もっと感じたいという彼女に、私は応えようとした。
もっと感じさせたいという私に、彼女は身体を委ねてくれた。
求める。
応える。
委ねる。
受け止める。
まだ二人とも「主従」など意識していなかった。
それでも今振り返れば、のちに十五年以上続くことになる私たちの関係の原型は、この頃から少しずつ生まれ始めていたのだと思う。
私が彼女の「主」になるより、ずっと前。
彼女が私の「愛玩」になるより、ずっと前。
二人の性愛は――
互いの剥き出しの欲望から始まった。
